技術者のための法律に関する基礎知識①~法的責任の種類

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car speed crashing

専門が異なる者同士での会話は難しさを伴います。

原因の一つは,お互いの専門分野における基礎の基礎というべき部分の説明を経ないままに,応用的な話や最先端の話に入ってしまうためではないかと思います。

自分の専門分野において当たり前すぎることについては,そもそもその部分の説明が必要であることに気づかなかったり,「こんなことまでわざわざ説明するのは相手に失礼ではないか。」と思って説明するのを躊躇してしまったりします。

しかし,自動運転の法律問題に関して,異なる分野の方との会話が増えるにつれ,実は基礎の基礎の部分の理解こそが本質であり,お互いその部分を説明し合った上で,議論を進めるべきだと感じています。

そこで,法律を専門としない方のために,法律に関する基礎知識について,自動運転の法律問題を考えるに当たって必要と思われる範囲で,何回かに分けて説明したいと思います。

最低限これだけ頭に入れておけば,小難しく聞こえる法律の議論を聞いても,本質部分は掴めるようになると思います。

今回は,法的責任の種類について説明します。

1 3種類の法的責任

 自動運転に関する法律問題のうち最も重要な問題は,交通事故が起きたときに誰がどのような「法的責任」を負うかです。

 法的責任には,3種類あります。

 刑事責任と民事責任と行政責任です。

 

2 刑事責任

刑事責任 自動運転

 

 刑事責任とは,国家が「犯罪」を犯した者に対して科す「刑罰」です。

 自動車の交通事故の場合であれば,典型的な交通事故では,加害車両のドライバーが「自動車運転死傷行為等処罰法」の過失運転致死傷罪によって7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金という刑罰に処せられます。

 

3 民事責任

民事責任 自動運転

 

 民事責任とは,加害者が,被害者の権利等を侵害したときに,被害者に対し,損害を賠償する責任です。

 自動車の交通事故の場合であれば,加害者が,被害者に対し,怪我の治療費や車の修理費を支払います。

 加害者が保険に加入していれば,保険会社から,これが支払われることになります。

 

4 行政責任

行政責任 自動運転

 

 行政責任とは,社会秩序の維持を害する行為をした場合に課される行政上の不利益です。

 自動車の交通事故の場合であれば,運転免許証の停止処分や取消処分がこれに当たります。

 

5 議論における注意点

自動運転に関する法的責任の議論に関しては,刑事責任の議論をしているのか,民事責任の議論をしているのか,行政責任の議論をしているのかということを,きちんと意識しておく必要があります。

なぜなら,自動車の交通事故に関しては,現行法上,過失責任の原則という基本原則について,刑事責任はこの原則を貫いているのに対し,民事責任はこの原則を大幅に修正しているため,議論の出発点からして異なっているからです。

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