自動運転に関する国際的合意及び会議体の整理

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 自動運転に関する法律問題を検討するには,道路交通に関する国際的合意について理解しておく必要があります。

 理由は2つです。

 1つ目の理由は,国際的合意は,日本国内の法律の上位規範であり,日本国内の法律問題は国際的合意の効力を受けるからです。

 2目の理由は,自動車は,国際的商品ですから,国際展開していく上で,国際的合意についての理解が不可欠な分野だからです。

 そこで,自動運転の法律問題を検討する前提として,道路交通に関する国際的合意と関係する会議体を整理しておきたいと思います。

 国際的合意について理解しておくことにより,議論がガラパゴス化していくことを防げると思います。

1 道路交通に関する国際的合意

自動運転に関する国際的合意

 道路交通に関する国際的合意は,大きく二つに分けられます。

 道路交通条約と自動車の国際基準に関する協定です。

 前者は,運転者の義務等を定めた国際的合意であり,日本では,これを受けて,道路交通法が設けられています。

 後者は,自動車が備えておくべき技術基準を定めた国際的合意であり,日本では,これを受けて,道路運送車両法に保安基準が設けられています。

 道路交通条約は,二つあります。

 1949年ジュネーブ道路交通条約と1968年ウィーン道路交通条約です。

 前者の1949年ジュネーブ道路交通条約の主な批准国は,アメリカや日本です。

 後者の1968年ウィーン道路交通条約の主な批准国は,ドイツ等のヨーロッパです。

 自動車の国際基準に関する協定も,二つあります。

 1958年協定と1998年協定です。

 前者の1958年協定の主な批准国は,日本やヨーロッパです。

 後者の1998年協定の主な批准国は,アメリカ,日本,ヨーロッパです。

 

2 自動運転に関する会議体

自動運転に関する合議体

 自動運転に関する議論は,UN(国連)のECE(欧州経済委員会)でなされています。

 「欧州経済委員会」と聞くと,ヨーロッパの国のみで構成され,経済に関することしか話し合われていないようにも感じます。

 しかし,実際には,ヨーロッパ以外の国も構成員ですし,正式な構成員ではない国も会議に参加することがありますし,経済に限らず,幅広い分野の話し合いがなされています。

 ECE(欧州経済委員会)の下には,いくつもの委員会が設けられていますが,そのうちの一つに「INLAND TRANPORT COMMITTEE」という交通に関する委員会が設けられています。

 「INLAND TRANPORT COMMITTEE」の下にWP1という会議体があり,このWP1で道路交通条約に関する話し合いがなされており,その下に自動運転に関するワーキンググループが設けられています。

 また,「INLAND TRANPORT COMMITTEE」の下にはWP29という会議体があり,このWP29で自動車の国際基準に関する話し合いがなされており,その下に各分野の「EXPERT GROUP」が置かれ,更にその下にワーキンググループが設けられています。

 WP29では,自動運転に関する議論は,ITS/ADという自動運転に関する国際基準化を担当する会議体のほか,ブレーキ走行装置分科会の下の自動操舵専門家会議や自動ブレーキ専門家会議で行われています。 

 

3 参考文献等

「自動運転に関する国土交通省の取組」国土交通省自動車局技術政策課国際業務室長佐橋真人

UNECE INLAND TRANSPORT COMMITTEE Webサイト 

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