自動運転の実用化に向けた道路運送車両法の改正(4)

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自動運転の実用化に向けて行われた道路運送車両法の改正の解説の第4回です。

第4回の今回は,「電子的な検査に必要な技術情報の管理」を独立行政法人自動車技術総合機構が行うという規定について解説します。

まず,前提として,①「従前の検査方法」について解説し,②「新たに導入される電子的な検査」について解説した上で,③「自動車技術総合機構」が行う「電子的な検査に必要な技術情報の管理」の方法について説明します。

1 従前の検査

まず,従前の検査について解説します。

昔の自動車には,電子装置はありませんでした。

そのため,従前の検査(車検)は,外観のチェックをしたり,測定器を利用して機能確認を行ったりすることによって,自動車の安全性を確認していました。

2 新たに導入される電子的な検査

現在,多くの自動車には衝突被害軽減ブレーキや自動車間距離制御等が搭載され,電子装置が使われるようになってきています。

この電子装置に関する検査は,現在,警告灯の確認等の簡易な方法で行われています。

しかし,今後,レベル3以上の自動運転車の導入に伴い,電子装置の機能を確実に維持していくことが今まで以上に重要になっていきます。

そこで,レベル3以上の自動運転車の導入に伴い,自動車の電子的な検査を導入することになりました。

具体的には,車載式故障診断装置(OBD)を活用して検査を行うことになります。

車載式故障診断装置(OBD)とは,自動車に組み込まれている装置の一つであり,電子装置に故障があった場合,この装置にその記録が残ります。

そして,自動車のOBDポートにスキャンツール等を接続し,故障コード(DTC)の読取りを行うことによって,その自動車の電子装置に故障がないかを確認することができます。

レベル3以上の自動運転車の導入に伴い,今後,車検において,このような車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査を行うことになりました。

3 自動車技術総合機構による情報管理

このように,今後,車検において,車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査を行うことになるわけですが,そのためには,その検査のために必要な技術情報の管理が適切に行われる必要があります。

今回の道路運送車両法改正では,この技術情報の管理を「独立行政法人自動車技術総合機構」が行うという規定が設けられました。

自動車技術総合機構は,独立行政法人の一つであり,自動車について,研究,審査,検査,リコール,登録確認調査等に関する業務を行っている機関です。

この自動車技術総合機構が,今後,車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査のために必要な技術情報の管理を行うことになるところ,具体的には,以下のような方法が想定されています。

自動車技術総合機構によって,「特定DTC照会アプリ」が開発されることになります。

そして,車検の際には,この「特定DTC照会アプリ」をインストールした「法定スキャンツール」を自動車に接続し,故障コード(DTC)を読み取り,インターネットを通じて自動車技術総合機構のサーバーに接続し,判定を受けます。

OBD検査の流れの詳細が知りたい場合は,国土交通省のwebページを見るとわかります。

4 まとめ

このように,今回の道路運送車両法の改正では,今後,車検において,車載式故障診断装置(OBD)を活用した検査を行うことを前提として,その検査のために必要な技術情報の管理を適切に行うため,その情報管理を自動車技術総合機構に行わせるという規定を設けました。

これによって,使用過程においても,自動運転技術のための電子装置の機能維持が図られることになります。

今後の課題ですが,車載式故障診断装置(OBD)は,あらゆる故障を検知できるものではなく,例えば,速度等の一定の条件を満たさなければ,診断ができない項目があるなどの限界があります。 

そのため,これらの点についてどのように対処していくかを今後更に検討していく必要があると思われます。 

5 引用文献・参考文献

中川由賀「法の視点から見たこれからの点検整備・車検制度のあり方」『自動車技術』自動車技術会,2019年7月

明治大学自動運転社会総合研究所「自動運転と社会変革-法と保険」商事法務,2019年7月

道路運送車両法新旧対照条文

国土交通省「(道路運送車両法改正の)概要」

国土交通省「道路運送車両法の一部を改正する法律案要綱」

国土交通省車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方について(最終報告書)

国土交通省車載式故障診断装置を活用した自動車検査手法のあり方検討会

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