自動運転の実用化に向けた道路交通法の改正①

2019年5月,レベル3(条件付運転自動化)の実用化に向けて,道路交通法が改正されました。

そこで,これから,4回に分けて,実際の条文や警察庁の試案を見ながら,道路交通法の改正の内容を解説します。

そうすることにより,今回の改正のポイントと残された課題を明らかにしていきたいと思います。

 

第1回は,総論として,①道路交通法の位置付け,②レベル3以上で生じる問題,③改正のポイント3つを概観します。

第2回は,改正のポイントの1つめとして,「自動運行装置」「運転」の定義

第3回は,改正のポイントの2つめとして,「運転者の義務」

第4回は,改正のポイントの3つめとして,「作動状態記録装置」

について説明します。

 

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内閣府SIP自動走行システムシンポジウムに登壇しました

2018年10月7日,東京国際交流館において,内閣府戦略イノベーション創造プログラム(SIP)自動走行システムのシンポジウムが開催されました。

シンポジウムでは,「あなたと考える自動運転の安心・安全」をテーマとしてパネルディスカッションが行われました。

「自動運転をめぐる法的責任」というテーマで発表をさせていただくとともに,パネリストの一人として登壇させていただきました。

開催報告がこちらのWebサイトに公開されています。

私が当日の発表に使用した資料も掲載していただいていますので,もしご興味があれば,ご覧になっていただければと思います。

 

自動運転中にはどのような「運転以外の行為」が許されるのか④

自動運転中にどのような「運転以外の行為」が許されるのかという問題について,4回にわたり,整理しています。

第1回では,①用語の確認,②問題の所在,③問題となる場面

第2回では,①国際的議論の状況,②国内的議論の状況を整理しました。

第3回では,「運転以外の行為」を検討する前提となる「運転者の義務」について検討しました。

第4回では,

①「運転以外の行為」を規定する意義

②規定の在り方

③レベル3と4(運転手あり型)での違い

④システムによるコントロールの視点

について検討したいと思います。

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自動運転中にはどのような「運転以外の行為」が許されるのか③

自動運転中にどのような「運転以外の行為」が許されるのかという問題について,4回にわたり,整理していっています。

第1回では,①用語の確認,②問題の所在,③問題となる場面

第2回では,①国際的議論の状況,②国内的議論の状況を整理しました。

第3回では,「運転以外の行為」を検討する前提となる「運転者の義務」について検討します。

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自動運転中にはどのような「運転以外の行為」が許されるのか①

私が自動運転の法律問題を研究していると話すと,結構な頻度で「自動運転が実現したら,お酒飲んだ後に寝ながら自動車に乗って家まで帰ったりできるようになるんだよね。」と言われます。

しかし,私は,「いつか完全自動運転が実現するときがくればともかくとして,しばらくはまだそんな感じにはならないよ。」と答えます。

すると,「え!どうして!?」と尋ねられます。

「自動運転中にどのような『運転以外の行為』が許されるのか」という問題については,人によって持っているイメージがかなり異なっています。

この問題についての理解が不十分なままに自動運転が導入されていくと,事故を減少するはずが,反対に事故が増加することにもなりかねません。

そこで,これから4回にわたり,「運転以外の行為」の問題について理論的に整理していきます。

そうすることにより,「運転以外の行為」の問題に関する現時点での課題を明らかにしたいと思います。

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交通安全環境研究所講演会で講演をしました

2018年6月15日,国連大学ウ・タント国際会議場において,交通安全環境研究所の講演会が開催されました。

私も「自動運転に関する刑事責任 - 問題点と今後のあるべき方向性 -」というテーマで招待講演をさせていただきました。

講演では,

①現在の法律では,自動車に関する刑事責任に関してどのような規定があるのか

②自動運転が実用化されたら,自動車に関する刑事責任がどのように変容し,どのような問題が生じるのか

③その問題に対する解決策として,どのような対処が望ましいのか

をお話ししました。

講演概要がこちらの交通安全環境研究所のWebサイトに掲載されています。

 

なお,当日配布資料に誤記がありましたので,Webサイト掲載の資料では訂正してあります。

訂正箇所は,当日配布資料12頁のスライド20です。

 

技術者のための法律に関する基礎知識②~「立証責任」がどちらにあるかがとても重要

法律を専門としない方から,法律に関する文章はどうしてあんなに小難しく書いてあるんだという指摘を受けることがよくあります。

使う言葉が特殊ということもありますが,加えて,法律家同士では前提となっている法の基本原則についての説明を飛ばして,問題点の検討から始めてしまうと,法律家以外の方から見ると不親切な文章になってしまうのだと思います。

そこで,法律を専門としない方のために,法律に関する基礎知識について,自動運転の法律問題を考えるために必要と思われる範囲で,何回かに分けて,説明しています。

最低限これだけ頭に入れておけば,議論の本質は掴めるはずだと思われる知識をピックアップして説明しています。

今回は,「立証責任」について説明します。

 

関連記事:技術者のための法律に関する基礎知識①~法的責任の種類

 

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自動運転の法律問題~法律家向け勉強会パワーポイント資料

最近,法律実務家の方々から,自動運転の法律問題について質問を受けることが増えてきました。

法律実務家の方々は,様々な法律分野について幅広く日々最新の情報を収集していかなければならず,自動運転という特定の分野の情報収集にかけられる時間は限られていることと思います。

忙しい法律実務家の方々のため,2018年3月に法律実務家向けの勉強会でお話した際のパワーポイント資料をアップしております。

短時間で自動運転に関する法律問題を体系的に概観できるような資料になっていますので,参考にしていただければと思います。

 

「自動運転の法律問題」パワーポイント資料

警察庁の報告書から自動運転の法整備の方向性を見る~後編

前回に引き続き,2018年4月に警察庁のWebサイトにおいて公表された自動運転に関する報告書を読む際のポイントを書いていきます。

報告書は,

第1章 調査研究の概要

第2章 ヒアリング

第3章 海外視察

第4章 自動運転の段階的実現に向けた法律上・運用上の課題の検討

という構成になっており,最も重要なのは第4章です。

第4章では,第1節でレベル3以上の自動運転の自動運転システムの実用化を念頭に入れた交通法規等の在り方について検討しており,前回はここまで見てきました

今回は,第4章のうち

第2節 隊列走行に関する課題

第3節 その他の課題

 1 遠隔型自動運転システムに関する課題

 2 社会的受容性に関する課題

について見ていきます。

「隊列走行」と「遠隔型自動運転システム」は,自動運転システムのさまざまな態様の中の一つの態様であり,各論的な位置付けになります。

ただ,どちらも2017年から日本でも公道実証実験が始められているため,早急に法律上・運用上の課題を検討しなければならない分野です。

 

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